わたしは閻魔 あい。 地獄送りの舟。 わたしを監視していた蜘蛛が告げた。 「あい。お前は禁を犯した。閉ざすと誓った心の扉を開けてしまったのだ。お前にはもうこの仕事を任せることはできない。わたしと共に、地獄へ帰るのだ」 「そして…罪のいましめを受けよ」 「まだ駄目。地獄へは戻れない」 わたしは蜘蛛の手を逃れた。 柴田親子を引き離した。 そして、つぐみへ…。 「あなたのお父さんのこと、教えてあげる」 柴田が、やり直したいという妻あゆみを追い返し、彼女は事故死。 「俺の、せいじゃない」 「悪いお父さんね」 「お父さんが許してあげていれば、お母さんは死なずにすんだのに」 「わたしが、あなたのお父さんを地獄へ流してあげる」 わたしは、つぐみに藁人形を渡した。 捕らえた柴田一に、一目連と骨女が話していた。 「気が遠くなるような時間をかけて、お嬢は罪を洗い流してきた。自分の怨みを忘れ、心を閉ざして」 「それを、あんたたち親子は一瞬にして振り出しに戻しちまったのさ」 「先祖がお嬢の怨みの相手だったなんて、あんたらも驚いたろ。最悪の縁だよな」 わたしは、つぐみに母・あゆみの苦しむ姿を見せた。 「糸を引いて、心を解き放って」 つぐみの心は揺れた。 赤い糸に手がかかった。 そのとき駆けつける柴田。 「つぐみに何をさせようとした。答えろ閻魔あい!」 そして一目連と骨女。 「もうやめとくれよ、お嬢。こんなことしたって…」 「だまれ」 あゆみの事故現場。 「かわいそうなお母さん。全部あの人のせいよ」 「あなたが裁くのよ」 つぐみは柴田を見つめた。 「俺が死ねばよかったんだ」 柴田は泣き崩れ、つぐみにあやまった。 「後悔なんて意味無いわ。失ったものはもう戻らない」 「糸を解きなさい。わたしが、怨みを晴らしてあげる」 「俺が悪いんだ。つぐみもつらかったろ。寂しかったろ」 「さあ、糸を解きなさい」 つぐみの瞳から涙があふれた。 「バカー!」 「あたし、つらいなんて思ったことなかったもん。はじめちゃんといて楽しかったもん」 「はじめちゃんは楽しくなかったの?一緒に笑ったの嘘だったの?」 つぐみは柴田を抱きしめた。 「お母さんいなくて寂しいときもあったけど、はじめちゃんが、お父さんがいてくれたから、あたし大丈夫だったんだよ」 「ああ楽しかった。お前といるだけで俺は幸せな気持ちになれた」 桜のある滝。 わたしに仙太郎との楽しかった記憶がよみがえった。 …笑いあっていたあの頃。 「これ、いらない」 つぐみは藁人形を返した。 「好きだったんでしょ、仙太郎さんのこと。あの人も、ずっとあなたのことが好きだった。だから、ずっと後悔してた。それで、あのお寺を…」 桜の花びらが舞っている。 わたしの瞳から涙が流れた。 七童寺。 わたしは寺を燃やした。 頬を伝う涙。 「行くよ。さあ」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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