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ドラキュラの盾
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「そいつは目を覚ますのか?」

そう聞くと、優姫は横に首を振った。

「怖くなったシャリオは急いで屋敷を出た。
でも、門は閉まっていた。
すると、暗闇から声がする。
“もうすぐ、吸血鬼たちが目を覚ます。夜になるまでに逃げろ”
シャリオはすぐにエドガーの声だとわかった。
“エドガーも吸血鬼?”シャリオはおびえながら聞くとエドガーは頷いてシャリオの足元に向かって鍵を投げた。“門の鍵だ”
シャリオはエドガーの優しさに涙した。そして聞く。“なんで助けてくれるの?”
エドガーは言った。“僕は君に行為を抱いている”“私もよ、だから一緒に屋敷を出ましょう”シャリオは言った。
けど、エドガーは言った。“僕は陽の光をあびられない”
シャリオは泣きながら門を出て、エドガーの言うとおりに逃げ続けた。
でも夜までには間に合わなくて結局、吸血鬼に見つかってしまった。
それを知ったエドガーは最後の手段に…」


「あれー?風紀委員、まだ見回りなの?」

優姫の話の途中、藍堂英が現れた。


「…藍堂センパイ!授業はどうしたんですか?」


「んー、そんなのとっくに終わったよ」

「お前の話で長引いたんだよ」

俺は不機嫌に言った。

「零…怒ってる?」

「別に」


「もう真夜中だよ。早くお帰り」

「枢…センパイ」

優姫は顔を染めた。

「優姫、戻るぞ」


俺は優姫の手をひいて、スタスタと歩き出した。

「嫉妬も深すぎると…うざいよ」

玖蘭の声が聞こえたが、俺の耳には入ってこなかった。




―――…理事長の部屋まで来ると、優姫は息を切らしながら言った。

「どうしたの?零…」

「…さっきの話の続きを教えてくれ」


「…うん。
エドガーはシャリオを救う最後の手段に…シャリオの十字架のネックレスを取って、シャリオを逃がし、自分が盾となったの。
吸血鬼は十字架の力を受けると死んでしまうから、エドガーは死んでしまった。
…っていう話。ドラキュラっていう本は」


「そうか…。それで、俺に話そうと思った理由は?」


すると、優姫は今にも泣き出しそうな顔で俺に抱きついた。

「優…」

「零は私の盾にならないで良いから…。自分の身は自分で守れるよ」

グスンという音が聞こえた。


「泣くな」

「ふ…っ」

俺は優姫の頭をさすった。




大粒の涙を流した優姫は、何も話さなかった。

本を読んでいる優姫よりも面白くは感じないけど、いつもより愛おしく感じた。


優姫は強い。
俺よりも遥かに…。


あの日は、本当に優姫の強さを改めて思い知らされた一日だった。
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