雨のち嵐または晴れ
信じたい、信じられない
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『え、今…何て?』




…聞き間違いだと思いたかった。
でも、世の中はそう都合良く出来てないに決まってる。






“全国優勝したんだし…フランスでまた三人一緒に暮らしましょう”






電話越しで、お母さんはもう一度それを繰り返した。


…何もその事が突然で慌ててる訳じゃないの。
いつかはそうなるんだろうな、って考えてた。

でも実際に聞くと、やっぱり胸が嫌な意味で高鳴った。






別に家族で暮らしたくない訳じゃない。
両親を嫌ってる訳じゃないの。








でも私には、日本に…






「…無理に、とは言わない。今すぐじゃなくて良いから答え出してね」







そう言ってお母さんは、電話を切った。
続いて私も電源ボタンを押したけれど、暫くそのまま固まっていた。





目を閉じて脳裏に浮かんだのは…





『……リョーマ』





青学の超新人越前リョーマの顔。
私の人生を変えてくれた、大切な奴。
本人には言わないけど、私はリョーマを心から好き、なんだと思う。






フランスに行くという事は、彼との別れを意味してる。







『……フランス、か』






ごろん、とベッドに横になった。
待受画面に戻った携帯を見ると、視界に飛び込んできたのは、ぶっきらぼうな表情の私とリョーマ。







なんだか切なくなった。







…もやもやと考えててもきりがない。
明日、リョーマに相談しよう。









一人では答えが出ないから。






そう思ったら、すぅ…と目が自然に閉じられ、いつしか私は夢の世界に旅立っていた。









次の日、私は朝練をサボって教室に足を運んでいた。扉を開け、私を迎えたのはがらん、とした空気。
…当たり前だけど。
なんだかそれが、私の心を表している様で少し切なくなった。







「…リョーマは今、朝練、かな」







男子テニス部は今頃朝練真っ最中だろう。
リョーマの顔が見たくなって、窓際に寄った。

テニスコート全体を見渡すも…リョーマの姿がない。





『…あれ』






不思議に感じて、周りに視線をうつすも、見当たらない。
…と、木の影に白い帽子を見つけた。













でも、その瞬間目を大きく見開いた。











……だって、リョーマがマネージャーに抱き締められてたんだから。








ドクン、と心臓が大きな音を立てた。








…何で、どうして。







そんな疑問よりまず浮かんできたのは悲壮感。




これ以上あんなシーンを見たくなくて、私は窓に体重を預けて、ずりずり、と腰を落とした。








『…リョーマ』









ぽたり、と冷たい滴が床に垂れた。







“あれは事故かもしれない”
“リョーマは私に飽きた”





その二つの思いが、心の中を渦巻いている。






気持ち悪い、吐きそうだ。





『……っはぁ』








リョーマを信じたいけど、今の私の不安定な心境じゃあ難しい。







ただただ、苦しくて苦しくて…








誰もいない静かな教室で、嗚咽を殺して涙を流した。





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