雨のち嵐または晴れ
伝えられるのは1つだけ
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あれから何時間たったのだろう。








教室でリョーマの顔を見るのが辛くて、私は授業をサボって屋上に来ていた。
寝転がって空を見ていたら、いつの間にか襲ってきた睡眠に負けていたらしい。
今が何時間目なのか、今が何時なのか、全く検討もつかない。







『…』









リョーマに話を伝えなければ。






正直、会いたくない。





でも、アイツに例え新しく好きな女が出来てたとしても、黙ってフランスに行くのは少しどうかと思う。





だから、きちんと伝えて意見を貰おう。





そう考えて、私は屋上からテニスコートへと足を運び始めた。









リョーマにきちんと伝えなきゃいけない、とか言ってるけど。
…本当は、心の中で少し期待してた。
あれは事故だ、ってリョーマに言って欲しくて。









…でも、そんな期待はあっさり裏切られる。










私が男子テニスコートに行けば、案の定リョーマはいた。
アイツは私を見つけると、少し目を見開いた。
それを見て、私は手を上げてこっちに呼ぼうと思った、けど…。






リョーマは私から視線を反らして、離れて行った。








……何、今の。






何だか軽く腹がたって、私はリョーマの名前を呼んだ。
それに周りの先輩達がアイツを冷やかしてるけど、その時凄い嫌そうな顔をしていた。
冷やかされることが嫌なんじゃなくて、まるで私と話すの事に対しての感情が出ている様だった。







「…何、用事なら早く済ませてよね」






思いきりめんどくさい、と顔に書いてある。
ぐっ、と拳を握りしめて苦しさを心に押し込めた。







『…今日の朝、何でマネージャーと抱き合ってたの』






回りくどいのは苦手だから、あえて直球で言った。






…これが帰国子女の性なのかもね。







誤解と言って欲しい気持ちを込めて、俯いていた顔を上げてリョーマを見た。

奴は目を見開いた状態で固まっていた。








「…別にアンタに関係ないでしょ」






はぁ、と深いため息をはくリョーマに、私は足元がバラバラと崩れる様な感じがした。期待はあっけなく壊されたのだ。







「用はそれだけ?」






くるり、と踵を翻して私に背中を向けたリョーマを、慌てて立ち止まらせた。





心が痛い。
悲鳴を上げてる。
今にも引き裂かれそうだ。
…でも伝えなきゃ。








『今日…大事な話があるの。だから、一緒に帰ろ』







壊れそうな心境の中で何とか言い切った自分に拍手を送りたい。
でも、そんな私の努力も、リョーマはあっさりと砕いた。






「…無理。忙しい」
『何で、?』
「だから、テニスが忙しいんだって」







ねぇリョーマ。
私に飽きたなら飽きた、と一言そう言ってよ。
どうしてそんなにも、私を避けようとするの?






『私だって部活あるし、待ってるって…大事な話が』
「…煩いな、俺だって一人でいたいんだよ!!」








嗚呼、貴方はもう…私には完全に気持ちがないんだね…―






『…あっそ、じゃあ勝手にすれば』







アンタは私に伝える事さえさせてくれないの?
それほどどうでもいい存在なの?





でもきっとこんなこと言うと、またリョーマをイラつかせてしまうから…







『……リョーマ』
「…何、まだ何か用」







私がアンタの為に、贈る最後の言葉は…







『……サヨウナラ』







“別れの言葉”だけだった。





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