1/5ページ目 もう、どれだけ逢っていないのか… あれだけ私が嫌がっていた彼の吸うタバコの匂いさえこの部屋には残っていない。 朝、太陽の光が部屋に差し込むと同時に目が覚める。 彼が狭いと言って買い換えた大きなベッド。寝ぼけたままいつものように彼の温もりを求めて腕を伸ばすけど… 「…冷たい…」 独りでは大き過ぎるベッド。温まるのは右半分。彼がいない。彼の匂いもしない…。 伸ばした腕を何でもなかったかのように引っ込めて何気なく時計を見る。 「…仕事に行かないと…」気だるい体をベッドから引きずり出すと冷たすぎる空気に一瞬顔を顰める。 「今日は雪でも振るのかな…」独り言は冷えた空気に水蒸気になって消えていった。 聖騎士団中央支部。団長室の無意味に立派な時計の長針が7、短針が40を指す。 「ちょっと遅かったかな…」 出勤するには十分に早い。 聖騎士団と言っても今は只の国際警察だ。朝はそんなに早くない。 彼は部下達が出勤するまで後30分待たなければならない。が、彼にとってはそれは日常的な事で…むしろ今日は30分も遅刻だ。と本気で思うくらいだろう。 「今日は少し遅かったですね…」 唐突にかけられた声は、自分を自分よりも良く知ってくれている頼りになる私(団長)の補佐官兼秘書。 「えぇ、少し寄り道をしてしまいまして…それより、今日の予定は?」 何時ものように仕事のスケジュールを聞く。今日も張り切って仕事に取りかかろうと意気込んだ…が、返ってきたのは一言。 「ありません」 「…え?」 思わず聞き返す。別に聞こえていなかった訳ではない。 「えぇっと…?早急に処理する仕事は…」 「カイ様が早急に処理する書類はありません…当分は」 此方が言い終わる前に言い切られてしまった。そして… 「最近は朝から明け方までずっとお仕事をなされていたおかげで急ぐような仕事はありませんよ?何があったかは聞きませんが、働き過ぎです。今日から一週間程休みを取ったらいかがですか?」…彼の癇に触ったのか言葉に棘がある… 「…ぁ…っと…」 「来たばかりですが、暫くは自宅で体をお休め下さい。目の下に隈を作ったまま部下達の前に出ないでくださいね…では、失礼いたします…」 秘書は言い残すと部屋を後にしていった… …なる程…やっと納得した。 秘書の弾丸みたいな小言に呆けていたカイが気付いたのはドアが閉まる音がしてからだった。「謝る時間位くれれば良かったんですがね…」申し訳なさそうにカイは机の上に肘をつき小さな溜め息を…微笑を含んだ溜め息をついた。 机の上、メモ用紙に綺麗な字で【I have a holiday for around 1 week.…Thank you 】と書き残し部屋を後にする。 時計の長針はまだ7時を指していた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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