1/4ページ目 あなたを好きだと気づいて、幾日。 風邪は治ったというのにまだ言えずにいる。 この気持ち。 体調が良くなったのなら帰る。という彼を半分無理に引き止めて休日を一緒に過ごしている。 これは、我が侭。 あんなにあなたを近くに感じたのに、今は長く続く沈黙がいつ終わってしまうかが、心配。 何か話をしようにもあなたを見る度心臓の不定期で大きな鼓動が妨げる。 向かいあって二人、ソファーに腰掛けている。 カイがチラチラと視線を此方に向け、小さな口を少し開きまた閉じる。その繰り返しをしているのを見てソルは金魚を思い浮かべる。 カイの風邪が治って数日。始終こんな感じだ。 「…腹…減ったな」 何だかもどかしげな少年に見かねた男は、その宙を舞う碧い瞳を直視して告げた。 「え?…ぁ…と…ご飯?」 お茶を啜る手を止め、少年は赤い顔で首を傾げる。 まだ昼食には早い時間だ。 しかし… 「おう。メシ。」 と、素直な言葉に嘘はない。 「解りました。何かないか見てきますね」 と、キッチンに向かった時だ。 「ぁ?…食材はあるだろ?…簡単に作れ」 … …… 硬直。 作る? 私が? 何を? 少年にとって理解不能な言葉を発する男へと振り向く。 「…?」 先程まで直視できなかったあなたを、今は凝視。 その行動に彼は察する。 「…もしかして、料理出来ねぇのか?…」 その言葉に少年の頬はみるみるうちに真っ赤になる。 「っわ、悪かったですね!不器用なものでっ!!」 あなたに知られた私の秘密。 料理が出来ない事。 恥ずかしくて、悔しくて。 出前でも取って下さい。と告げ、またソファーに腰掛けようとした。が、思いがけない言葉にそれは遮られる。 「簡単なの教えてやるから、エプロンしてキッチン行け」 腕を引かれ、強制連行される。 男二人、キッチンに立つ。 「…ほ、本当に作るんですか?…」 真っ白で清潔なエプロン姿の少年が不安げな声で見上げてくる。 「簡単だろ?…ほら、先ずは…」…――― 2時間後。 「ソル!ソルソル!!出来た!!」 綺麗に整頓され、必要最低限のものしかなかったキッチンに、色々な物が散乱している。 「…ここまで料理が出来ない奴だったとは…」 カイには聞こえないように呟いた。 ぐったりとソファーに凭れかかり、お昼丁度を指す時計の針が空腹感を増させる。 初めて作った料理はカイでも簡単に作れるポトフ。 慣れない手付きに見かねて包丁を握るカイの手を後ろから支える感じでそっと、その手を握った。 まだ食材を切っているだけだと言うのに、赤くなる頬。 久しぶりに楽しい時間。 からかうのは止めといた。 「食べましょう泪 満面の笑みで食卓に二人分の料理が置かれる。 「あぁ…」 昼食を終え、二人分の食器の後片付けをしていると、カイが恥ずかしそうに俯き、皿を拭きながら言った。 「さっきのポトフ、凄く美味しかったです…また、作ってくれますか?」 嬉しそうに゛次゛の話をする。 が、男には少年のそんな些細な望みすら叶えてやる事は出来ない。 「…作り方教えたろ?…」 「っぇ?…はい…」 彼は、゛次゛の話はしない。 してくれない。 私にあまり会いたくないのは解っている…。 正直、作り方なんて覚えれる状況じゃなかった。 直ぐ後ろにあなたがいたから。 あなたが手を握ったから…。 握られた瞬間心臓が壊れるかと思った。 自分をこんな風にして去っていくあなたが恨めしい。 自分ばかりが子供で、…惨めで…。 「…おい」 「へ?」 動きの止まった少年の頭を軽く撫で、顔を覗き込んでくる。 「っわ!!」 ビクッと肩を跳ねさせると手から皿が落ちる。 「あ!?」 「っと…」 皿は割れる事なく男の手に救われた。 「?!…あ…す、すみません…」 「あぁ…?」 皿を受け取りまた片付けを始める少年に少し違和感を覚えたが、あまり気にせず半日が終わった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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